「噛む力」
暖かい日が増えてきましたね。それでも、朝晩の寒さにはまだ体に力が入ってしまいます。体調を崩しやすい季節ですので、皆様、お身体を大切にお過ごしください。
さて今回は「噛む力」についてお伝えします。
寒くて体に力が入ったり、歯を食いしばったりと無意識にしてしまうことも多い季節かと思います。
気がついて力を抜いた時ほど、どれだけの力がかかっていたのかと思うほど、顎などへの不快感を感じます。
人間の噛む力とはどれくらいのものなのでしょうか。
それは、その人の体重に比例するといわれています。体重が40㎏の方は40㎏の力が、50㎏の方は50㎏の力が噛む時にかかっているそうです。スポーツをする人は力をいれるときに歯を食いしばることがあるので、体重以上の力がかかることもあるそうです。
健康な歯だと、固い食べ物も簡単に噛み砕けると思います。リンゴの丸かじりや固いおせんべいなども食べられるかと思います。
リンゴを手で潰すことはなかなかできないことを考えると、握力よりも
多くの力がかかっていることがわかります。
食事のとき、食べやすい硬さはその人の噛む力の25%~30%程度で、固いおせんべいは約14㎏の力がいるそうです。その力が歯と歯茎にかかっています。
ただ、無意識のうちにしてしまう歯ぎしりや食いしばりは、その人の体重の2倍くらいといわれています。その動作を何時間もしてしまうと思うと、どれだけの力が歯にかかっているのでしょう。顎にも負荷がかかりますし、日常的な咬合力(噛む力)の4~6倍の負担になっているそうです。そのため、顎の痛み、頭痛、歯の破損にも繋がってきます。
人間の歯の表層にあるエナメル質は、人間の体の中でも一番硬いとされています。鉄やガラスよりも硬く、水晶と同じくらいだそうです。このエナメル質が削れたり、欠けたりするような力がかかってしまうのが、歯ぎしりや食いしばりです。
噛めることはとても大切ですが、力が強すぎると歯を痛めて、削れたり、時にはしみたりと色々な影響を与えることもあります。
そこで、歯ぎしりや食いしばりにはナイトガード(マウスピース)の装着という方法もあります。無意識下でのことは、自分自身ではコントロールするのが難しいため、寝ているときなどにナイトガードをつけていただくのも歯を守る方法の1つです。当院でも対応していますので、気になる方はご相談ください。
「噛む力」には、歯並びやご自身の歯で噛めることも大切です。また、奥歯の役割が重要にもなってきます。奥歯が一本なくなると、「噛む力」は半減するといわれています。奥歯だけではありませんが、磨きにくいところも丁寧にケアをしてください。
ご自身の歯で「噛める」ことはとても幸せなことです。体と同じで年齢と共に、どうしても健康のままの状態ではいられなくなることもあります。「噛む力」が衰えていくと、食事が楽しくなくなり、軟らかいものを食べるようになります。そうすると、噛む回数が減り、脳への刺激が減少することで認知症や生活習慣病にまで、発展することがあります。
定期的なメンテナンスと、虫歯や、歯周病、抜けたままにしておくなどせずに治療をして、かぶせものや、義歯などで噛めるようにしていきましょう。